|
戦術面や選手起用に不満があるのでしょうか。
新たな監督によるチームの立て直しに期待したいですね。
【【悲報】トルコ代表のクンツ監督、日本戦の敗戦を受けて解任へ決定か】の続きを読む
|
|
今月、ヨーロッパ遠征を行ったサッカー日本代表は、9日にドイツ代表と対戦し4-1で勝利。12日にはトルコ代表に4-2で勝利を収めた。ヨーロッパの強豪を撃破した森保ジャパンに対して、SNSでは「日本強すぎ」がトレンド入りするなど称賛が殺到。
次回のW杯ベスト8入りを期待する声が高まる中、元日本代表MFで、JリーグのY.S.C.C.横浜に所属する松井大輔選手は、2つの試合をどう評価するのか。話を聞いた。
◆◆◆
ドイツ代表とトルコ代表に2連勝したがセットプレーは課題――今回はドイツ戦、トルコ戦に2連勝し、8得点、3失点。この結果は、どうとらえていますか。
松井大輔(以下、松井) 海外の場合、結果がすべてで、結果が出ていればすべて良いみたいな感じですけど、日本は結果だけではなく、内容もみる。その観点からすると今回は危なげない内容で、結果を積み上げているものも素晴らしかった。ただ、勝っているから問題が見えていないこともあるんで、そこは多少心配するところでもあります。
――課題として挙げられるのは、どういうところでしょうか。
松井 例えばセットプレーですね。今はゾーンで守っていますけど、トルコ戦は大外が見えていなかった状態から折り返されて、ボールを追う感じになって失点した。そこはもっと突き詰めていく必要があるかなと。カタールW杯では得点の30%がセットプレーから生まれています。そこでどんなデザインをして得点を挙げていくのか。そこでいかに失点しないように守備をするのか。W杯前に慌ててやるのではなく、今のうちにやっていた方があとあとラクになる気がします。
――積み上げてきている部分でいうと、どういう点が良かったですか。
松井 ドイツ戦は、ビルドアップがなかなか難しかったのですが、そういう時、ロングボールを入れてセカンドボールを回収し、繋いで攻撃することができていました。これは川崎フロンターレがレアンドロ・ダミアン選手にボールを当てて攻撃するパターンなのですが、押し込まれつつもそうして点が取れましたし、カタールW杯でも機能していたカウンターでも点が取れた。
得点パターンが増えたけど、それは選手の自信も大きいですね。カタールW杯で勝ったという自信と、今、各選手が欧州の舞台でドイツの選手と同じ環境でプレーしているので、怖がる感じがまったくなかった。
日本代表は攻撃の選択肢が広がっている――カタールW杯の時の課題は、カウンターが主でポゼッションに難があるということでした。そこは今、かなりテコ入れしている感じでしょうか。
松井 今の代表は、ビルドアップをしながらボールをしっかりと保持した上で得点を狙おうというのが、ひとつの大きなテーマになっています。今回はビルドアップで狙いつつ、難しいのであればロングボールを上田(綺世)選手に合わせるとか、状況に応じて臨機応変にプレーしていた。ポゼッションどうこうというよりも、選択肢が広がっているなという印象でした。
――ドイツ戦の菅原由勢選手、トルコ戦の毎熊晟矢選手、それに左サイドバックで出場した伊藤洋輝選手の存在は、攻守において重要な役割を担っている感がありました。
松井 サイドバックがインサイドに入っていく動きだったり、起点になるようなサッカーは世界のトレンドでもあります。サイドバックの動きを見ているとクロスを上げるのはもちろん、ボランチの横について、ボランチ的な仕事をするプレーが出来ていた。戦術的な理解度が進んでいるし、それを見ると森保監督のチームとしての積み重ねが出来ているのかなと思いますね。
――ドイツ戦では、2列目は三笘薫選手、鎌田大地選手、伊東純也選手というユニットでした。トルコ戦は、中村敬斗選手、久保建英選手、堂安律選手でした。それぞれ個性が異なるユニットで、対戦相手によってうまく使い分けているような感じでしたね。
松井 ドイツ戦での3人はカタールW杯でも一緒にプレーしていましたが、それぞれが単独で突破できるタイプ。トルコ戦の久保選手、堂安選手は左利き同士で、右サイドや真ん中から昔の(本田)圭佑と(香川)真司を彷彿とさせるようなワンツーを見せたり、3人目を使ったり、テクニックで打開していくユニット。久保選手はドイツ戦、トルコ戦で得点に絡んだし、周囲と連携した動きがすごく良かった。この連動も代表に必要なこと。
今後、このユニットを組み直したり、トルコ戦の中村敬斗選手のように新しい選手が入ってくれば、よりよくなる可能性がある。これが完成形ではなく、森保監督はまだもうひとつ先を見ていると思います。
人材不足が叫ばれるセンターFWで期待する選手――カタールW杯の時もそうでしたが、センターFWの人材不足が日本の課題とも言われていましたし、今もヴィッセル神戸で活躍している大迫勇也選手の代表復帰を求める声が大きいです。センターFWの評価はいかがですか。
松井 古橋(亨梧)選手は、裏への動きなどは素晴らしいですが、少し気負っているのかなと。冷静にプレーしていけば必ず点が取れると思います。上田選手は、ドイツ戦で1点決めましたし、ポストもできていた。GKと1対1の場面で外すシーンもありましたけど、FWとしての役割は果たしていたと思います。
大迫選手が替えの利かないFWみたいにずっと言われていますけど、今回の上田選手を見ていると、代表に入る度によくなってきていますし、フェイエノールトで結果を残していけばさらに重要な存在になっていくでしょう。他では町野(修斗)選手に期待したい。185cmの大きな体を持ち、スピードもある。W杯で世界と戦うためには、彼のようなサイズのセンターFWがいないと勝つのが難しくなっていくと思うので、欧州で成長して代表に戻ってきてほしいですね。
――チームの底上げを実現するには、センターFW以外にどのポジションの選手が必要ですか。
松井 センターバックとGKです。センターバックは冨安(健洋)選手、板倉(滉)選手が安定していますけど、彼らの次ってなるとなかなか思い浮かばない。トルコ戦で町田(浩樹)選手がまずまずのプレーを見せていましたが、彼のような存在がもっと出てこないといけないでしょう。
ただ、一番の重要なポイントはGKでしょうね。カタールW杯ではPKが多かったんですが、GKはそれをストップする力、ビルドアップへの貢献も含めて、全体的に高い能力が求められます。個人的な意見ですが、世界的には身長が190cm以上ないとW杯などで活躍するのは難しい。さらに若さというよりも30代で安定感と貫禄があればなおいいんですが、Jリーグでは外国人選手がゴールマウスを守るケースが多く、そういう日本人GKが少ないのは大きな課題です。
――カタールW杯から9か月経ちましたが、チームの総力は上がったと思いますか。
松井 上がっていかないといけないですよね。日本だけじゃなく、海外もどんどんレベルが上がっているので、常にアップデートしていかないといけない。選手個人も三笘選手がプレーで高評価されたり、遠藤(航)選手がリバプールに移籍したように、どんどんステップアップして個人のレベルを上げていけないといけない。そのためには、日本は個人のパーソナルコーチやポジションの専属コーチをつけて質を高めていくことも重要かなと思っています。
W杯でベスト8を目指すためには戦力の積み上げが必要――W杯べスト8は、4年後見えてきそうですか。
松井 ドイツ戦、トルコ戦を見て、選手層が厚くなり、戦術面の進化もありましたけど、これでベスト8に届くかというと、まだまだかなと。選手層でいえば、代表はほとんどが海外組で、彼らの成長も欠かせないですが、Jリーグからもそういう選手がもっと出てこないといけない。
トルコ戦で伊藤(敦樹)選手が豪快なゴールを決めましたが、彼のようにいきなり欧州のピッチに立っても当たり負けせず、普通にプレーするというのはなかなかできないこと。Jリーグの選手のレベルも上がっていると思えたので、そういう選手がもっと出て来て、突き上げていってほしい。そして、どんどん戦力を積み上げていくことがベスト8を目指す上で大事になってくると思います。
――カタールW杯では川島永嗣選手、長友佑都選手らベテラン勢の存在がクローズアップされました。松井選手が出場した南アフリカW杯でも川口能活さん、稲本潤一選手といったベテラン勢が大きな役割を果たしました。予選や親善試合では、彼らの存在はまだ必要ないかもしれないですが、次のW杯の舞台では、彼らのようなベテランはチームに不可欠だと思いますか。
松井 絶対に必要ですね。経験がある選手は、雰囲気はもちろん、目に見えない部分でもすごく力になるんです。南アフリカの時は能活さんが選手側の話を聞いてくれましたし、俊さん(中村俊輔)もチームを支えてくれた。そういう選手がいないとW杯では戦えないし、チームはまとまらない。
年齢的に、次は、ハセ(長谷部誠)でいいかなと思います。カズさん(三浦知良)もいい。ベテランで貢献というよりも、ちょっとシンボル的な感じになってしまいそうですけど(苦笑)。ベテランの存在の重要性は岡田(武史)さんが代表監督だった時から森保さんも継続しており、そのことはよく分かっていると思います。
取材・文=佐藤俊
(松井 大輔)
|