ドラマ『何曜日に生まれたの』で描かれるサッカー部のエースの事故に、ファンが静かに増殖中
『何曜日に生まれたの』雨宮純平役で存在感を発揮 YUが語る、“縁”で繋がった自身の旅路 - Real Sound 『何曜日に生まれたの』雨宮純平役で存在感を発揮 YUが語る、“縁”で繋がった自身の旅路 Real Sound (出典:Real Sound) |
このドラマをジャンル分けするのは難しい。恋愛ドラマであり、ミステリー要素もあり、ヒューマンドラマ的な側面もある。
朝日放送テレビの日曜ドラマ『何曜日に生まれたの』のおもしろさは、静かに、波立つように広まっている。本記事では、通称・ナンウマの魅力を言葉にすることに挑戦したい。
『何曜日に生まれたの』公式サイトより
高校時代に経験した“とある事件”により、引きこもり(通称・コモリビト)になった黒目すい(飯豊まりえ)。当時サッカー部のマネージャーだった彼女は、エース的存在だった雨宮純平(YU)とともにバイクで海に出かけ、事故に遭う。どちらも一命をとりとめたものの、純平はその後、試合に出ることはかなわなかった。
なぜ彼らは、大事な試合の前に、バイクで海へ出かけたのか? それが、このドラマの最大の謎として君臨する。
◆不穏な空気感漂う
すいは長らくコモリビト生活を送っていたが、漫画家である父・丈治(陣内孝則)が、カリスマ的ラノベ作家である公文竜炎(溝端淳平)と組んで新しい漫画を作ることに。すいの人生、いわばコモリビトになるきっかけとなった事件をモデルに、物語を組むことなった。
作品のため、10年ぶりにコモリビトから脱却したすいは、当時のサッカー部員・江田悠馬(井上祐貴)や、もう一人のマネージャー・江田瑞貴(若月佑美)らと再会する。彼らとやりとりをするうちに、例の事件の真相にも近づいていくことになる。
大きな謎を解き明かしていく過程は、求心力のあるミステリーとしてぐいぐい引き込まれる。そのなかで、彼らのあいだを縦横無尽に飛びまわる恋愛の矢印が、生々しいほどに浮かび上がってくる。
公文や丈治の担当編集者である来栖久美(シシド・カフカ)は、彼らがつくる漫画を「鮮烈なピュア・ラブストーリー」として世に送り出そうとしている。しかし、少しずつ透けて見えてくるのは、あまりピュアとは言い難い思惑や疑念だった。
恋愛やミステリー要素も外せないが、このドラマにおいて、ふと出てくる深いセリフも見逃せないポイントである。
そもそも、長らくコモリビトだったすいが、父のため漫画のために苦手な人間関係に向き合う……。この時点で、ヒューマンドラマに欠かせない「葛藤、苦しみ」や「主人公の成長」がある。くわえて、シングルマザーである来栖編集長の言葉が、なんとも胸に迫るのだ。
「精神的にも経済的にも自立した女性は、ミニマムな愛を求めるようになる」。来栖編集長いわく、名付けるなら「積極的シングルマザー」とも言える存在だ。優秀な男性の子どもを産み、相手とは籍を入れず、自分と子どもだけの最小単位でシンプルに生きる。世間からは目をひそめられるような価値観かもしれない。しかし、当人が納得している生き方や選択を、他の誰が責められるだろうか。
◆結局、このドラマのジャンルはなんなのか
このドラマの主軸は、「10年前の交通事故はなぜ起こったのか?」の謎、そして、すいを取り巻く恋愛模様である。しかし、思わず聞き流してしまいそうなちょっとしたセリフが、驚くほどにこのドラマの深みと厚みを増す要因になっているのは、間違いない。
<文/北村有>
【北村有】葬儀業界を経て2018年からフリーランス。映画やドラマなどエンタメジャンルを中心に、コラムや取材記事を執筆。菅田将暉が好き。

(出典 news.nicovideo.jp)
コメントする